最近の研究によれば、ハエとヒトの形態形成は我々の想像を遥かに越えてよく似ており、様々な臓器や付属肢の形成は、互いにホモロ-ガスな遺伝子や遺伝子カスケードにより支配されていると考えられる。本プロジェクトの目的は、ハエを使って、ヒトゲノム計画で得られる多数の遺伝子、特に形態形成遺伝子の調節領域(エンハンサー)の探索及び当該遺伝子の活性をシステマチックにバイオアッセイできる系を構築し、かつヒトのhedgehog遺伝子をモデルとして、ここで得られたシステムの有効性を検討することである。ヒト遺伝子のエンハンサー活性をハエ個体内で効率よくアッセイするためには、また、ヒト遺伝子(cDNA)の活性を与えられた標的細胞で限定的に発現させるためには、内在性の(ハエの)エンハンサーによる影響(エンハンサートラップ効果)を最大限に除去する必要がある。レトロトランスポゾンgypsyのオクターマ-配列のインスレーター効果を適当なtrans genic flyを使って測定し、その結果に基づき、オクタマ-配列を2つづつ両側に持つインスレーターベクター系を構築し、実際にトランスジェニックバエをつくり、その効果を調べた。ヒトの3つのhedgehogのゲノム構造を調べ、それら及びハエのhedgehogが、同一のエクソン・イントロン境界構造を持っていることを見出した。更にハエhedgehogの全エンハンサーのセットをほぼ完全に同定し、それに対応するヒトSonic hedgehogのゲノム断片の一部をハエに導入したところ、ハエでエンハンサー活性が出現した。また、hedgehogのエンハンサー変異株を、ハエ・エンハンサーを用いてレスキューする系を作り、現在ヒトhedgehog子にレスキュー活性があるかどうか検討している。
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