CD38を介したB細胞の活性化にはBtkが重要な役割を果たすことをこれまでに明らかにしてきた。今回の研究課題ではその情報伝達系の解明に向けた研究を推進した。 BtkはSrc型チロシンキナーゼと相互作用し得ることから、我々はCD38を介したB細胞活性化におけるFyn、Lynの関与についてそれぞれの遺伝子欠損マウスを用いて解析した。その結果、fyn-/-マウスB細胞ではCS/2抗体単独刺激による増殖応答やIL-5Rα鎖の発現は野性型マウスのB細胞よりやや低下しており、lyn-/-マウスB細胞ではCS/2抗体に対する反応性がfyn-/-マウスB細胞よりさらに低下していた。fyn-/-lyn-/-マウスのB細胞はCS/2抗体刺激に不応答であり、IL-5Rα鎖の発現誘導は見られず、IL-5共存下でも増殖、IgM産生の亢進は認められなかった。CD38刺激によるBtkのチロシンリン酸化はfyn-/-マウスB細胞では認められたがlyn-/-マウスB細胞およびfyn-/-lyn-/-マウスB細胞では認められなかった。これらの結果から、CD38を介したB細胞活性化にはFyn、Lynの両方が関与する伝達系が存在し、相乗的に働いていることが示唆された。また、Btkの活性化に対してはLynがその上流に位置していると考えられた。 Bukを含むシグナル伝達系を明らかにするもう一つのアプローチとしてXIDマウスで変異を含むBtkのPH領域に注目してこの領域に会合する分子の同定を試み、IL-5刺激によりBtk活性が亢進する早期B細胞株Y16由来のcDNAライブラリーから547アミノ酸から構成されると考えられる分子のcDNAを単離した。予想されるアミノ酸配列はプロリン残基、セリン残基に富み、3箇所のチロシンキナーゼによるリン酸化モチーフを含んでいた。
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