研究課題
多彩な花色は、そのほとんどがアントシアニンによって発現する。花色素アントシアニンは配糖体として存在し、花弁中では単分子状態で存在するのではなく、精密な構造認識に基づく分子会合体となって初めて美しい色を発現する。これらの分子会合体の形式には、共存する金属イオン、無色のコピグメントのみならず、分子内の芳香族酸残基なども関与し、いずれも、分子内の糖の立体によって会合のキラリティが規定され、自己組織化した分子会合体によりアントシアニンの深色化と安定化が起き、千差万別な色となる。今回、アジサイの花色変異について、配糖体分子の精密構造認識による会合分子(自己組織化超分子)の形成の面からの成果を報告する。まずアジサイの花色素の成分と化学構造について、花色の違うアジサイ萼片を用いて分析した。すると、色素成分物質は、花色に係らずデルフィニジン3-グルコシドシドであることがわかった。また、コピグメントとしてクロロゲン酸、およびイソクロロゲン酸が主に含まれ、長年花色との関与が指摘されているA13+も検出された。成分からの花色再現試験により、これら3成分が青色発色に必須であることがわかった。会合に必須な部分構造を明らかにする目的で、非天然型の色素、コピグメントを用いて、同様の実験を行なった。コピグメントのキナ酸誘導体は、新たな高選択的化学合成法を開発することにより、イソクロロゲン酸およびその類縁体を調製した。A13+存在下でアントシアニンとキナ酸3-エステルからは安定なアシサイの青色溶液が得られたが、キナ酸5-エステルを用いると沈殿となった。これらの組み合わせ実験より、キナ酸のエステル部位が会合に極めて重要であることが明らかにできた。
すべて その他
すべて 文献書誌 (2件)