機能探索分子を活用して、ニコチン受容体を介する神経保護作用機構について以下の点を明らかにした。 1)神経細胞保護作用を有するニコチン性受容体サブユニットの決定:α7サブユニットの選択的拮抗薬であるα-bungarotoxin(α-BTX)やα4β2サブユニットの拮抗薬であるdihydro-β-erythroidine、さらにα7サブユニットの選択的作動薬であるDMXB、α4β2サブユニットの作動薬であるcytisineを用いて、ニコチン性受容体刺激による神経細胞保護作用はα7サブユニットおよびα4β2サブユニットのいずれをも介して発現しうることを明らかにした。また、ニコチンはグルタミン酸誘発神経細胞死のみならず、カルシウムイオノフォア暴露による神経細胞死にも抑制作用を有すること、しかしnitric oxide(NO)生成試薬であるSNOC暴露によるNO誘発神軽細胞死には保護作用を示さないことを明らかにした。2)ニコチン性受容体刺激による神経細胞保護作用がin vivoの系でも認められるか否かの検証:Wistarラットを用いて一過性中大脳動脈閉塞モデルを作製した。脳虚血に先立ち、24時間ニコチンならびにDMXBを投与した群、脳虚血作製後薬物を投与した群、および無処置群における梗塞巣の大きさを測定し、ニコチンならびにDMXBの前処置により梗塞巣の縮小化が認められることを明らかにした。3)ニコチン性受容体刺激によるβアミロイド誘発神経細胞死の抑制:培養大脳皮質ニューロンにおいてニコチンの投与によりベータアミロイド毒性は抑制された。α-BTXはニコチンによる保護効果を拮抗した。DMXBの投与によってもβアミロイド毒性は抑制された。βアミロイドの神経毒性は、ニコチン性受容体の刺激により抑制されることが示唆された。
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