研究概要 |
筆者らはα-アルキニルマロン酸ジエチルエステル体が酵素によりあるいは非酵素的に加水分解・脱炭酸反応を経由して共役アレニルエステル体に誘導されることを期待し、パパインタイプのSH酵素カテプシンB、Lの特異的阻害剤の開発を試みた。デザイン合成した各種α-アルキニルマロン酸ジエチルエテル体はアルカリ加水分解条件下に期待通りのカスケード様反応が極めて容易に進行することが明らかとなった。認識部位としてL-Pro-L-Ileが結合しているカスケード様反応生成物であるピロリノン誘導体は人肝臓カテプシンBを特異的かつ強力に阻害した。筆者らは最近S・・・X(X=N,O,S,ハロゲン)、CH・・・π、CH・・・O相互作用を有する分子の合成開発及びその証明と生物活性への寄与ならびに応用研究に興味をいだいている。3つのアンジオテンシンII受容体拮抗作用物質のX線結晶解析を行ったところ全ての化合物においてS・・・O close contact(2.542-2.610Å)が観察された。S・・・O相互作用の安定性は簡単なモデル化合物を合成し、それらのX線結晶解析と種々のレベルでのab initio MO計算によって証明した。現在この様な相互作用を有する分子のカテプシン類阻害剤開発への応用研究を展開している。
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