研究概要 |
1.シロイヌナズナの3種のcDNA全長構造解析の結果、これらはすべてシアノバクテリアや紅藻葉緑体のシグマ因子と近縁な蛋白をコードすることが明らかになった。また、葉緑体局在シグナルとなるトランジットペプチドと予想される領域とGFP遺伝子との融合遺伝子をシロイヌナズナプロトプラストに導入したところ、GFP蛋白質の葉緑体への局在が観察された。従って、これら遺伝子産物は葉緑体シグマ因子群であることが強く示唆された。 2.植物体から調製したRNAに対し、3種のシグマ遺伝子それぞれをプローブとしたNorthern解析を行った。その結果、これら遺伝子のmRNAは、暗所適応した後の明処理により誘導されることが明らかとなり、光条件による制御の存在が示された。 3.SigA蛋白について、大腸菌内で過剰発現系を構築するとともに、抗血清を作製した。ウェスタン解析により、SigA蛋白は約42キロダルトンの蛋白質として発現しているのが検出された。 4.sigAおよびsigB遺伝子は第一染色体、sigCは第三染色体上にマップされた。 5.sigA,sigCcDNAについて、sense鎖、antisense鎖をCaMV35Spromoterの下流に連結し、シロイヌナズナに導入したトランスジェニック植物を作製した。これまでに、それぞれ数ラインの株を確立しているが、顕著な表現形質は観察されていない。 6.sigA-uidA融合遺伝子をシロイヌナズナ植物へ導入した植物を作製し、GUS染色を行った結果、sigA遺伝子の発現が緑色の光合成組織に限られていることが明らかになり、葉緑体の分化形成と対応した発現パターンが示された。 7.タバコおよびイネcDNAライブラリーについて、シロイヌナズナシグマ遺伝子をプローブとしたスクリーニングを行い、タバコから2種、イネから1種のsigAホモログを単離することに成功した。
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