研究概要 |
気孔の開閉は高等植物の光合成と水循環を制御する重要な機構である。CAM植物の気孔はその他の植物と正反対の挙動を示す(夜開き昼間閉じる)が、気孔開閉情報に関する解析は皆無である。本研究では新しい気孔開閉測定装置の試作とその応用および分子生物学的手法の導入によって、CAM植物等における気孔開閉情報伝達機構を明らかにすべく以下の実験を行った。(1)磁場型質量分析装置(Prima600)の試料ガス導入部を改造し、単離表皮の気孔開閉を測定するための装置の試作を開始した。本装置はプロセス用に開発されたため、実験室で研究用に用いるにはかなりの改造を要することが判った。ほぼ改造は完了した。(2)ベンケイソウの表皮を単離し、超音波処理によってどの程度孔辺細胞以外の表皮細胞を壊し、付着している葉肉細胞を除けるかの検討を行った。(3)非接触で葉温を測定する事により気孔開閉の解析を行い、気孔開閉機能の異常な変異株の単離する手段として、赤外線温度解析装置をもちいて非接触でアラビドプシスの葉温を測定する事を計画し、予備的実験として角形シャーレの寒天上で生育させたアラビドプシスの野生株20株について赤外線温度解析装置(サーモビュアーJTG-6100,日本電子)で温度分布を測定した。植物が生育しているシャーレを暗所に約20分放置した後、シャーレ全体の温度分布を測定した。さらに蛍光灯で光照射した後の温度分布の変化を測定した。その結果、植物葉の部分では気孔開口にによると思われる温度変化が観察され、一方、寒天部分ではそのような温度変化は観察されなかった。
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