研究概要 |
本研究はシロイヌナズナを使って、葉のクロロフィル含量の低下したpale leaf表現型を示す葉の機能発達欠損変異株の中から、葉での糖誘導性遺伝子発現制御の異常になった新しい変異株を単離し、葉の機能発達における糖応答性遺伝子発現制御や糖の輸送の果たす役割を明らかにすることを目的とする。そのためにまず、Columbia株を用いてActivation Tagging Lineの作製を続けており、現在までに独立の約3,000ラインを確立した。pale leaf表現型を示し、かつ葉でのβ-amylaseやアントシアニン合成系遺伝子の糖応答性遺伝子発現が異常になった突然変異株の単離を300ラインのT2世代を用いて行い、3ラインから劣性の目的とする変異株を得、現在も解析を続けている。また、倍地の糖濃度の増加にともない花成の遅延が見られることを見いだし、これは糖の代謝的効果により花成が遅延することを明らかにした。また、高レベルのサイトカイニンを含む培地で生育させた個体も花成遅延を示したことから、杉山達夫教授(名古屋大学)のグループとの共同研究を行い、培地の糖濃度上昇に伴い地上部でのサイトカイニン蓄積が促進されることを見出した。クロロフィル合成や花成にはサイトカイニンが関わると推定されており、以上の結果は、糖シグナリングとサイトカイニンシグナリングの複雑なクロストークの存在と、それらが葉の機能発達や花成などの個体の生長制御に重要な役割を果たしていることを示唆しているものと考えられた。
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