本研究では、ホヤの胚発生におけるホメオボックス遺伝子の機能および発現制御機構の解析を行い、ホヤのボディプランを解明し、脊索動物に基本的なボディプランを推察する。今年度は、以下のような成果を得た。 1.ホヤのホメオボックス遺伝子の機能解析:Hroth mRNAをマイクロインジェクションにより受精卵に導入したところ、尾部の形成が著しく阻害されることが分かった。この時胴部(頭部)では細胞数が増加しているように思われた。強制発現胚の形態から、少なくとも脊索、筋肉の系譜が影響を受けているように思われる。2.ホメオボックス遺伝子の発現制御機構の解析(割球間の相互作用):我々はホメオボックス遺伝子Hrdll、Hroth、HrHox-1、Hrcad-1の表皮における発現域が前後軸に沿って並ぶことを見出している。表皮細胞はすべて動物半球に由来する。そこでこれらの表皮領域特異的な発現が、どのような制御を受けているのかを割球破壊実験により解析した。その結果、表皮での発現には植物極側細胞からのシグナリングが必須であること、このシグナリングは32細胞期までの早い時期に起きること、さらに前方表皮でのHrdll、Hrothの発現は前方植物極割球からの、後方表皮でのHrHox-1、Hrcad-1の発現は前方植物極割球からのシグナリングに依存していることを見出した。3.形態形成関連遺伝子の単離、発現の解析:ホヤのPax遺伝子Pax2/5/8の発現パターンを明らかにし(Reading Universityの和田博士との共同研究)、中枢神経前方の領域化に関してホヤと脊椎動物の間に良いパラレリズムを見出した。またホヤのsanil相同遺伝子Hrsnaを単離し、その構造、発現を調べ、形態形成に関するホヤと脊椎動物と類似性、相違性を明らかにした。
|