本研究は、分裂酵母モデル系を用いて、HSP、転写因子、MAPキナーゼあるいはカルシニューリンなどが複雑に関与するストレス応答機構を主に分子遺伝学的手法により解明することを目的としている。平成9年度は、以下のような成果を得た。 1.ストレスにより活性化される新規MAPキナーゼ系について 我々が発見した分裂酵母の第3のMAPキナーゼであるPmk1は、細胞を高浸透圧あるいは高温度下におくとそのチロシン燐酸化が増加する。これらのストレスから燐酸化にいたる経路は不明であるが、遺伝学的手法により、Pmk1を燐酸化するキナーゼと脱リン酸化するフォスファターゼをコードすると思われる遺伝子を取得し、遺伝子破壊などによりその機能を解析した。またカアルシニユーリン遺伝子破壊の結果生じる塩感受性の形質がPmk1遺伝子の破壊により拮抗されることから、カルシニューリン経路とPmk1経路が塩感受性の制御において拮抗的に働いていることを明らかにした。 2.過剰発現により亜砒酸ナトリウム抵抗性を与える新規転写因子について 亜砒酸ナトリウムは熱ショックに類似したストレス反応を細胞に引き起こすことが良く知られている。亜砒酸ナトリウムに対する感受性を指標に行ったスクリーニングにより、過剰発現した場合、細胞に亜砒酸ナトリウム抵抗性を付与する遺伝子をクローニングした。本遺伝子は、その推定アミノ酸配列からb-zip型の転写因子と思われる。現在、遺伝子破壊などにより本遺伝子の機能を解析中である。
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