研究概要 |
酵母S.cerevisiaeの小胞体膜に糖蛋白質に特異的なシャペロンカルネキシンをノックアウトしても酵母S.cerevisiaeは正常な細胞活動を行うことが明らかにされた。したがって、カルネキシンノックアウト酵母で、異種糖蛋白質のモデルとして安定性の異なるグリコシル化リゾチームを用いて分泌にどのような影響を与えるかを検討した。その結果、安定な変異体(wild-type,S91T)をグリコシル化したものはカルネキシン欠損株でも野生株でも差異なく多量に分泌した。一方、不安定変異体(SS結合破壊型C76A,ヘリックス不安定型K13D)をグリコシル化したものは野生型酵母では分泌が著しく抑制されたが、カルネキシン欠損酵母では多量に分泌した。この結果はカルネキシンの品質管理機構を証明しており、フォールディングしにくい不安定変異体をカルネキシンが捕捉し、分解する経路の存在を示すものである。興味深い点はカルネキシン存在株と欠損株での分泌量に一定の比率で相違が見られ、分泌と分解との間に平衡関係が存在していることが示された。現在、この点をさらに解明するために、さらに変異体の種類を増やし、この点を解明するための研究を進めている。
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