近年、新規に合成されたタンパク質が異常分子のため本来の高次構造が形成されなかったり、サブユニット会合型タンパク質で余剰の生成サブユニットが蓄積された場合は、分泌経路から除外され速やかに分解されることが明らかになった。これは「小胞体の品質管理機構」と呼ばれ、カルネキシン(CNX)・カルレティキュリン(CRT)など小胞体内シャペロンが異常分子認識を行うと考えられている。我々は、遺伝的異常アンチトロンビンやチログロブリン、抗血栓薬であるワルファリン投与下でのビタミンK依存性凝固因子などの分泌タンパク質が本機構によりプロテアソーム分解されることを見いだした。さらに、この分解は、CNX・CRTと糖タンパクとの相互作用を阻止するグルコシダーゼ阻害剤(カスタノスペルミン)下でも起こるが、小胞体マンノシダーゼ1剤の阻害剤(キフネンシンやデオキシマンノジリマイシン)では阻止されることを見いだした。特に、異常チログロブリンはキフネンシン添加により完全に分解阻止され、小胞体内に蓄積した。連続免疫沈降法によりCNX・CRTとプロテインCの相互作用時間を調べたところ、新生プトテインCは約1時間でCNX・CRTから解離した。しかし、小胞体マンノシダーゼ1阻害剤の効果は、CNX・CRT解離後においても見られた。以上の結果は、CNX・CRT非依存性で、糖鎖中のマンノースに依存する新規の異常タンパク認識機構が存在することを示唆している。
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