本年度は、主にラット大脳皮質神経細胞の初代培養系を用いて、リン酸カルシウム法によるDNAトランスフェクション系の基礎検討と、BDNF遺伝子のカルシウムシグナル依存的な発現制御系及びプロモーター解析を重点的に行った。 1.ニューロン特異的な発現ベクター作製の試み: 初代培養系にはグリア細胞が混在し、それによってDNAはよく貧食される。そこで、ニューロンだけで発現が可能な発現ベクターの構築を、サイレンサーを用いて行った。その結果、プロモーターの種類によってサイレンサーだけではニューロン特異性を出せないことが明らかとなった。 2.BDNF遺伝子のプロモーター解析: 5′欠失遺伝子を構築しルシフェラーゼ遺伝子をレポーターとしてトランスフェクションを行った結果、-200bp下流領域にカルシウム応答性エレメントの存在することが明らかとなった。また、大脳皮質ニューロンでも、BDNF/NT-3遺伝子間における対立的発現制御が認められるか否かについて、現在検討中である。 3.BDNF遺伝子の発現制御系の解析: カルシウムシグナルによるBDNF遺伝子の活性化には、最適な細胞内カルシウム濃度のあることが明らかとなった。また、電位依存性カルシウムチャネルとNMDAレセプターから流入するカルシウムは、BDNFとc-fos遺伝子発現に異なったルートを介して制御を行うことが明らかとなった。
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