研究概要 |
(1)突然変異mtDNA導入マウスの作製には、マウスのmtDNA欠損細胞(ρ^0細胞)の樹立が必要不可欠であるが、最近申請者らは世界で初めてマウスのρ^0細胞の樹立に成功した(Inoue,K.,et al.J.Biol.Chem.1997;Inoue,K.,et al.BBRC 1997,in press)。また、この細胞を用いてmtDNAの突然変異が糖尿病の原因になり得ることを直接立証した(Soejima,A.,et al.J.Biol.Chem.1996)。更に、この細胞に老化したマウスの脳神経系のmtDNAを細胞融合法によって人工的に導入する実験系も確立した(Inoue,K.,et al.J.Biol.Chem.,1997)。 (2)ごく最近当初の目的である人工的に突然変異を導入したマウスmtDNA含むシャトルベクターの作製に成功し、このベクターのミトコンドリアへ導入法等の確立に全力をあげているところである。 (3)最後に、様々なヒトの病原性突然変異mtDNAを導入したHeLa細胞を使って、ミトコンドリアでこれまで考えられてきた常識を覆えす事実、すなわち"細胞内のミトコンドリアは機能的には単一である"という新しい仮説を提唱し、遺伝学の基礎的分野にも大きく貢献することができた(Takai,D.,et al.,J.Biol.Chem.1997)。 今後の展開:mtDNA突然変異の病原性と発病の機構の解明および治療薬のスクリーニングには、ミトコンドリアノックアウトによるミトコンドリア疾患モデルマウスの確立が極めて有効である。しかしながら技術的な障害により、ミトコンドリアノックアウトマウスの作製は世界的レベルで研究されているにもかかわらず未だ成功した報告はない。このような状況の中で、申請者らは本研究助成を得てすでに第一の問題であるマウスのρ^0細胞の樹立に成功し、更にマウスmtDNA含むシャトルベクターの作製に成功したことから第二の問題もクリアしつつあり、本申請の目的である"mtDNAノックアウトマウスの作製"を実現できる見通しがでてきた。
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