研究概要 |
リボザイムの触媒作用発現には金属イオン,持に2個のMg(II)が必須であることが明らかとなっているが,その作用機構は十分に解明されていない。申請者らはこれまでに,RNA加水分解反応に対する金属イオンおよび錯体の触媒作用を検討してきた結果,ランタニド金属イオンがRNAを迅速に加水分解することを見出した。本研究では,ランタニド金属イオンによるRNAの加水分解作用を動力学的に検討し,反応機構の解明を行なった。その結果,水酸化ランタニドイオン2個が会合した化学種の濃度と加水分解活性の依存性はよく一致し,この化学種がRNA加水分解反応の活性種であることが強く示唆された。水酸化ランタニドの会合体は,RNAのリン酸ジエステル結合部位と強く錯形成したのち,塩基触媒として2′-OHを活性化するとともに,酸触媒として協同的に作用することによりRNAの加水分解反応を促進していると考えられる。また,ランタニド金属イオンと過酸化水素を共存させることにより,ランタニド金属イオンが多核の複合体を形成し,RNAを効率的に加水分解することを明らかにした。同一反応条件でランタニド金属イオンのみでは加水分解はほとんど進行せず,過酸化水素の添加の効果およびランタニド金属イオンの多核化の効果は明らかであった。 さらに,これらの多核化の効果を利用して,従来知られていた錯体と比較して,より高いRNA切断活性を持つ亜鉛多核金属錯体を合成することに成功した。
|