平成9年度にTrans-Translationの役割について以下の研究成果を得た。 1)lacリプレッサー発現制御におけるTrans-Translationの役割:lacリプレッサーの転写は、lacリプレッサーの下流に存在するlacオペレーターに結合するlacリプレッサーにより転写延長阻害(road-block)されることが知られている。この結果生成されるlacI mRNAには終止コドンを欠失したmRNAが含まれている。私は、終止コドンを欠失したlacImRNAにおけるTrans-Translationを見出した。このTrans-Translationは、活性型lacリプレッサーとlacオペレーターに依存し、lacリプレッサーの発現は自己制御されていた。さらに、Trans-Translationがlacリプレッサーの自己発現制御に必須であった。これらの結果により、生体内での遺伝子発現制御機構におけるTrans-Translationの役割が初めて明らかになった。 2)10SaRNA挿入のシグナル:タグのアミノ酸配列を分解耐性なアミノ酸配列に変えた10SaRNA変異(ssrADD)と、10SaRNAにコードされたペプチドに対する抗体を用いて、Trans-Translationの産物をウエスタンにより同定する系を構築した。また、終始コドン直前に3種類のフレームシフト変異を導入したcrp遺伝子変異を作製した。ウエスタンとノーザン解析により、終始コドンを欠失した変異crpmRNAにおいてTrans-Translationが起こり、その結果タンパク質分解のみでなくmRNA分解も促進されることが明らかになった。
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