研究概要 |
tRNAはクローバーリ-フ型の二次構造を取ることで知られているが、Drosophila melanogasterのイニシエーターメチオニンtRNA(tRNA^<Met>)は、これ以外の二次構造をも取りうることが報告されている[JBC267,11972(1992)]。これは、tRNA前駆体を特異的に切断し、成熟したtRNAを形成する酵素、リボヌクレアーゼP(RNaseP)のRNA触媒サブユニット(M1 RNA)をもちいた切断実験により確かめられた。すなわち、M1 RNAは、tRNA中のアミノアシルステムとTΨCステムループ、および3'末端のCCA配列のみを認識しtRNAの前駆体を切断するのであるが、tRNA^<MeT>のTΨCステムループ、および二次構造変化で新しく形成された40〜44番目と65〜69番目の塩基間に形成されるステムをアミノアシルステムとして認識し、tRNA^<Met>を切断するのである。このような成熟tRNA配列中での切断をハイパープロセシングという。この二次構造変化により、tRNA^<Met>は、アンチコドンと識別塩基(tRNAの3'末端から4つ目の塩基)とが接近し、清水らの原始tRNAモデル[JB117,23(1995)]に似た構造となることを発見した。この原始tRNA型の二次構造を取りうる動的tRNAがtRNA^<Met>以外にも存在するかどうかを調べる目的で、私たちは、M1 RNAのハイパープロセシング反応を利用して、Drosophilaの全tRNAを検索した。その結果、M1 RNAによりハイパープロセスされるいくつかのtRNA種があることが明らかとなった。現在それらの同定を行っている。
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