本研究は、神経細胞特異的に発現しており、脳脊髄炎を伴うヒトの自己免疫疾患とも関連するなど興味深い特徴を示し、その細胞内機能が未解明のHu蛋白質の機能ドメイン構造を明らかにすることを目的とし、Hu蛋白質に共通に見られる特徴、すなわちRNA結合ドメインとして3個のRNA recognition motif(RRM)をもつ点に着目し、それぞれのRRMの標的RNA配列を詳細に解析した。マウスHu蛋白質mHuCにさまざまな欠失変異を導入し、変異体蛋白質のRNA結合特異性をUVクロスリンク法などで解析した結果、アミノ末端側の2個のRRM(RRM1およびRRM2)がアデニンとウリジンに富んだ配列(AU-rich配列)に対して特異的に結合することを見出した。この際、RRM2は単独ではRNA結合活性を示さず、RRM1のAU-rich配列への結合を強く促進する機能を担っていることが明らかになった。また、ポリ(A)セファロースを用いた沈降実験から、カルボキシ末端側のRRMはmRNAの3'末端に存在するポリ(A)配列に特異的に結合することを明らかにした。これらのことから、Hu蛋白質はAU-rich配列をもち、かつポリ(A)配列をもつ特異的なmRNAに結合して、それらのmRNAの代謝調節を行っていることが強く示唆された。さらに、酵母two-hybrid systemを用いた解析から、Hu蛋白質間に蛋白質間相互作用があることが示唆された。
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