研究概要 |
細胞性粘菌のミオシンII遺伝子を用いて組換えミオシンを作成し、ATP加水分解反応が特定の中間状態にトラップされている変異ミオシンを多数作成した(Sasaki et al.,J.Biol.Chem.,1998,1999,2000).アクチンと相互作用しながら滑り運動をするときに、ミオシンモータードメイン内でおこる構造変化が、これら変異体作成であきらかになった。これら変異ミオシンの結晶構造解析は、米国ウイスコンシン大学、ドイツのマックスプランク研究所の結晶解析グループとの共同研究で進行中である.こうした研究の結果、ATP加水分解にともなう連続的な分子構造変化を原子レベルで追跡することが可能となろう.また、緑色蛍光タンパク質GFPあるいはその青色変異タンパク質BFPを融合したキメラミオシンを作成し、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)法で、ATP加水分解に伴うミオシンの構造変化を調べた.この結果、ATP結合直後にミオシンはいわゆる"レバーアーム"を振り上げた状態になり、ATP加水分解後にレバーアームが振り戻されることが明らかとなった(Suzuki et al.,Nature,1998).これは、滑り運動に十分な大きさの構造変化がATP加水分解の特定ステップでおこっていることを実験的にしめした初めてのものである。さらに、1分子レベルでのFRETを計測できる1分子FRET顕微鏡をを作成し、力発生にともなうレバーアームの動きを1分子レベルで観察した(Suzuki et al.,FEBS Letters,,in press).
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