研究概要 |
細胞性粘菌の細胞は、走化性運動、貧食などアクチン細胞骨格が関与する様々な細胞運動を行い、一方、標的遺伝子破壊が容易なため、多様なミオシンモーターの生理的機能の解析に有利な生物である。本研究は、この細胞性粘菌より、未知のミオシン分子、特にモータードメイン以外の機能ドメインを合わせ持ったミオシン分子を接索してその分子及び細胞レベルでの機能を明らかにすることを目的とした。今年度はまず、ミオシンのモータードメインでよく保存された二つのアミノ酸配列(P-loopとSwitchl領域のN末端側の保存配列)をもとに設計したPCRプライマーで、細胞性粘菌ゲノムDNA又はcDNAを鋳型に増幅される断片から新奇ミオシン分子を検索した。約50クローンの配列を決定した結果、既に知られている10種の細胞性粘菌のミオシン分子に加えて、1種の新奇ミオシンが見いだされた。このミオシンについて現在までにモータードメインの配列を決定した。このミオシンはloop1と呼ばれるミオシン頭部のループが130アミノ酸もの長さに及び、その配列は細胞性粘菌の一部のクラスlミオシンの尾部に見られるATP非感受性アクチン結合部位同様Gly,Proに極端に富んだ配列になっていた。それ以外の頭部の配列は典型的なクラスlミオシンであった。このミオシン分子は、頭部に第二のアクチン結合部位を持ち、アクチンフィラメントに結合したまま滑りや力を発生させる新しいミオシン分子の可能性がある。今後、この新奇ミオシンについて尾部の配列を決定し、また、標的遺伝子破壊により細胞レベルでの機能を明らかにする一方、他の新奇ミオシン分子の検索を行う。
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