神経細胞死の防御と機能修復

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09280101
• 研究種目: 重点領域研究
• 研究機関: 群馬大学
• 研究代表者: 小宮 義璋 群馬大学, 医学部, 教授 (50010046)
• 研究分担者: 辻本 賀英 大阪大学, 医学部, 教授 (70132735) ; 加藤 泰治 名古屋市立大学, 医学部, 教授 (60094364) ; 福田 淳 大阪大学, 医学部, 教授 (90028598) ; 井出 千束 京都大学, 医学部, 教授 (70010080) ; 高坂 新一 国立精神神経センター, 神経研究所, 部長 (50112686)
• キーワード: 神経細胞死 / DP5 / smn / 脊髄性筋萎縮症 / Iba-1 / 肝由来神経活性化因子(LDNA) / ニューロフィラメント / 軸索再生

研究概要

1).細胞死をおこすトリッガ-の固定と情報伝達のプロセス
培養神経細胞においてアポトーシス時に発現誘導される遺伝子として固定されたDP5は92個のアミノ酸よりなる新しい蛋白質をコードしていることを見出した。また単離ミトコンドリアを用いた解析により、Bcl-2はプロトンポンプの機能を果たしている、或はポンプを促進することを示唆すると同時に、Bcl-2結合蛋白として脊髄性筋萎縮症の原因遺伝子smnを同定した。さらにミクログリアに特異的に発現する新規カルシウム結合蛋白Iba-1を同定した。この蛋白は神経再生時における活性化ミクログリアの機能と密接な関連性があることが示唆された。
2).新しい神経栄養因子・生存因子の探索とその作用機構
新しい神経栄養・生存因子である肝由来神経活性因子(LDNA)の同定作業は最終段階の発現ヴェクターを用いた実験に入り、まもなく結果が得られる段階になっている。
3).生存神経細胞の機能修復
損傷脊髄後索に脈絡膜の上衣細胞を植えることによって、再生軸索の伸長が促進されることを見出した。またネコの視神経を切断し、末梢神経で架橋することにより再生した視神経軸索は一部外側膝状体に到達し、この時網膜の生存神経細胞の形態は正常のそれとほぼ同じ程度に回復していることが見出された。また再生を開始できた軸索のニューロフィラメントは、特にそのHサブユニット(NF-H)が再生神経に特有の反応を示すことが判明し、重合・脱重合制御に関与することが示唆された。

研究成果

• [文献書誌] Tsuda,M., Tashiro,T. & Komiya,Y.: "Increased Solubility of high-molecular-mass neurofilament subunit by suppression of dephosphorylation:its relation to axonal transport." Journal of Neurochemistry. 68(6). 2558-2565 (1997)
• [文献書誌] Tashiro,T., Komiya,Y., Kurachi,M.et al.: "Direct Visualization and characterization of stable microtubules from the neurites of cultured dorsal root ganglion cells." Journal of Neuroscience Research. 50(1). 81-93 (1997)
• [文献書誌] Imai,T., Ibata,I., Ito,D., Ohsawa,K. & Kohsaka,S.: "A Novel gene iba1 in the major histocompatibility complex class III region encoding an EF hand protein expressed in a monocytic lineage." Biochemcal Biophyscal Research Communications. 224. 855-862 (1996)
• [文献書誌] Horie,H., Sakai,I., Akahori,Y. & Kadoya,T.: "IL-1 β enhances neurite regeneration from transected-nerve terminals of adult rat DRG." Neuroreport. 8. 1995-1959 (1997)
• [文献書誌] Imaizumi,K., Tsuda,M., Imai,Y., Wanaka,A., et.al: "Molecular cloning of a novel poly peptide,DP5,induced during programmed neuronal death." Journal of Biological Chemistry. 272. 18842-18848 (1997)
• [文献書誌] Iwahashi,H., Eguchi,Y., Yasuhara,N.et al.: "Synergistic anti-apototic activity between Bcl-2 and SMN implicated in spinal muscular atrophy." Nature. 390(27). 413-417 (1997)
• [文献書誌] 小宮義璋: "軸索内輸送実験医学別冊Bio Science用語ライブラリー脳神経(御子柴克彦編)" 羊土社, 248(40-41) (1997)