研究課題
基盤研究(A)
西洋近代の学を範として明治20年前後にはじまった日本の美術史学が、その成立当初から、国家的制度や機構と密接な関係を維持し、国民が共有しうる美的価値と歴史の体系を形成してきたことを、近年の研究成果は明らかにしている。それは近代国家として西洋に認知されようとする国情を背景として、日本の文化的ナショナルアイデンティティの構築をめざすものであった。今日、一般的に用いられる美術史の言葉や思考が、こうした美術史学の歴史のなかで形成され、意識化されない制度として働いていることは、美術史研究者が広く認識すべき問題となっている。本研究は、このような問題意識にたち、日本における美術史学成立期以来の資料を収集するとともに、1)美術行政・美術教育と美術史学、2)「作品」概念の成立とその社会的機能、3)日本におけるアジア美術研究、4)美術史家の美術批評と創作、5)近代の言説と日本美術史観の形成という5つの観点から美術史学の歴史に分析を加え、美術史学の今日的な課題と可能性を問い直した。
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