研究課題
基盤研究(A)
本研究は、主として日本中世の「荒廃」と「飢餓」の問題を、飢饉と戦争の被害の問題としてとらえようとしたものである。戦争の時代ともいわれる日本中世の社会には、かなり深刻な飢饉や凶作がはりついており、極言すれば戦争と飢饉のあいつぐ時代といえる状況が、史料的に明らかになった。また、それらの被害が、同時代の社会史にとって重要な歴史的意味をもつことも明らかになってきた。これら二つは、それぞれが非常に大きな問題であるので、とりあえずは飢饉に焦点を絞り、飢饉のみならずそれに関係があると思われる自然災害について検討した。日本中世および近世初頭、すなわち11〜17世紀における自然災害に関する情報の蒐集を行い、所期の目的のごとく年表作成を行った。具体的には、風損(大風)・水損(洪水)・虫損(蝗害)・旱魃・凶作・飢饉・疫病に関する、史料情報を集めた。なお、地震も災害情報として重要であるが、すでに先人によって、優れた史料集成が刊行されているので、ここでは、そのごく一部を収録するにとどめた。情報蒐集の対象とした主な時代の範囲は、研究課題に即して、中世後期(南北朝期)から近世初頭(元和末年)を中心としたが、ごく大まかには11世紀から17世紀に及んでいる。情報項目のうち、災害の地域性を考慮して、情報の発信源もしくは事件の発生地を記し、あわせて災害と関係の深い改元事情も収めた。ただし、古文書類の検索には作業が及ばず、記録類に限定せざるをえなかったことは、時間的制約上やむをえないとはいえ残念なことである。
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