研究概要 |
1)実験環境の整備 国立歴史民俗博物館において,清浄な環境で試料調製ができるよう,実験環境の整備が行われた。クリーンブ-スおよびドラフトチャンバを導入し,化学処理における信頼性を高めた。また,試料を酸化するために試料管に封入する真空ライン,および得られた二酸化炭素を精製,グラファイトカーボンに還元するために反応管に封入する真空ラインの2台を新しく設計し,これを導入した。 2)測定の実施 予備的な実験として,年輪年代の確定した樹木資料に炭素14年代法を適用した。箱根で出土したスギ埋没樹幹を年輪年代で測定し,B.C.245〜A.D.207という結果を得た。B.C.200〜B.C.81について10年分の年輪層を連続的に採取し,国立歴史民俗博物館および名古屋大学で化学処理を行った。名古屋大学で試料を酸化して二酸化炭素を得,精製してガラス管に封入したものをオランダ・グローニンゲン大学に送付し,加速器質量分析計(AMS)による炭素14年代測定を依頼した。 測定結果を北米産樹木の年輪年代に基づいた修正曲線に適合して得られた実年代は,奈良国立文化財研究所で行われた年輪年代と概ね一致した。これは,日本における年輪年代の妥当性を裏付け,修正年代構築の可能性を示すものである。
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