研究課題
基盤研究(A)
本研究は、年輪年代の確定した日本産樹木資料の炭素14年代を精密に測定し、特に、弥生・古墳時代を中心に日本における修正年代を確立することを目的とした。このため、資料収集を奈良国立文化財研究所、試料処理をおもに国立歴史博物館において行い、炭素14測定を名古屋大学とオランダフローニンゲン大学で行うという計画のもとに計画を遂行した。まず、国立歴史民俗博物館における試料処理関連施設の充実をはかり、平成10年度には、試料を低い汚染で処理できる装置を完成させ、炭素14測定試料の定常的処理を開始した。この間、資料として箱根のスギ埋没樹(HK、240BC〜AD200)、秋田県・払田柵遺跡のスギ材(AH1、AD690〜AD800;AH3、AD660〜AD900)、および長野県宮田村のスギ埋没樹(MT、AD330〜AD630)を確保した。これらの資料から10年毎の年輪試料を採取し、化学処理、セルロース抽出、炭酸ガスへの変換などを行い測定試料を作製した。炭素14測定は名古屋大学の新型装置の不調のため、オランダ・グローニンゲン大学の協力を得て行った。おもに加速器質量分析(HK、AH3、MT)で測定し、β線測定(AH1)による測定も行った。その結果平成11年度末までに、上記の資料についてほとんど全てのデータが確定した。結果は、欧米産の樹木に基づいたINTCAL98とほぼよい一致が得られている。大阪・池上曽根遺跡出土のヒノキ材(260BC〜150BC)においても同様の結果を得ている。この結果、当初構想した400BC〜AD900の1300年のうち、約900年分の実測データが得られたことになる。いずれもINTCAL98と、誤差の範囲内で差異がないという結果となったが、統計的にみると若干の差異が、特定の年代で現れている可能性もあり、なお研究の継続が望まれる。このように、日本の樹木の炭素14年代測定において、欧米産の樹木で得られているINTCAL98をデータベースとして年代修正することが、初めて明確に正当づけられた。これらの結果は、第17回放射性炭素国際会議(2000年6月、イスラエル)で発表予定である。
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