研究課題
基盤研究(A)
本年度は、まず近畿地方の代表的な惣墓の構成を正確に把握し、記録化するために、奈良県北葛城郡新庄町に所在する極楽寺墓地の測量調査を実施した。この墓地は、極楽寺を中心に周辺村落の共同墓地として現在まで使用されているもので、現地に遺存する石塔から、初源は中世に遡ることが確実である。さらに、近代初頭に整理されているが、近世段階の墓地形態を色濃く残し、惣墓の空間構成を明らかにすることが可能である。次年度に全石塔の銘文読みとりを行い、具体的な変遷を解明する予定である。墓地の全体測量の調査と合わせ、中・近世の石塔の変化を考古学的に究明するため、奈良県山辺郡都祁村に所在する春明院墓地の石塔の全点読みとりと、主要な石塔の実測を実施し、現行の葬送儀礼などの聞き取り調査を行った。この結果、中世にこの地域を治めた在地領主の吐山氏の氏寺から、現在の垣内の墓地として移り変わっていく様相を把握することができた。