研究課題
本研究の最大の研究目標であった『自筆画像研究支援ツール』(これは自筆本画像の任意部分とその解読文とを任意に関連づけ、コメントを付けてデータベースとして格納し、キーワードや任意文字列から、複数の部分画像を検索比較し印刷することのできる画期的なデータベースソフトである)に実際にデータを格納する実験を行い、プロトタイプ版の改良を継続した。現在NT版のみであるが、ほぼ研究上の諸要求に応えるものとして完成していることを検証した。試行版として世阿弥自筆『能本集』と後白河院自筆『梁塵秘抄断簡』を材料としてCD-ROM版を作成した。自筆本の資料調査と収集は所蔵者及び保存機関の許可が厳しいことから、写真による撮影を真福寺に限定し、開山能信の自筆資料を中心にかなりの幅を持つ各年齢ごとの個人言語資料を収集した。これによって、東大寺図書館蔵の凝然や近世近代の書簡の収集とともに、筆跡の経年変化を分析する上で有力なデータが得られた。研究成果『自筆画像研究支援ツール』の改良と普及のために、平成十四年度日本学術振興会科学研究費補助金『古典籍・古文書解読のための自習システムの開発』を引き続き申請した。本研究の成果を国文学研究資料館のホームページで近く公開する予定である。