研究概要 |
ネヴァンリンナ理論における第2主要予想への道の模索の試みを通して、ディオファンタス幾何学とネヴァンリンナ理論を統一的に説明する幾何学の建設に向けて研究を行った。Cartan,Ahlforsの第2主要定理とSchmidtの部分空間定理の類似性はその証明にまでおよんでいる。その本質は積分幾何的方法と対数微分の補題とそのディオファンティン類似である。本研究では両理論に共通の基盤を与える積分幾何的方法(ラドン変換)を確立することに成功した。その効用は,ディオファントス近似における数の幾何学とRolhの定理ややSchmidt部分空間定理やMordell-Faltingsの定理で重要な働きをする積定理が活躍する部分が,ネヴァンリンナ理論においては対数微分の補題が活躍する部分に完全に対応していることが明かになったことである。 一方,第2主要定理(予想)の解決にむけても大きな進展があった。それはn本の可換なベクトル場を導入することによってWronskian formaliamを実行し,多様体の非可換性を局所におしこめて,その特異性を正則曲線を通して解析するための新型の対数微分の補題を定式化できたことである。新型の対数微分の補題は積分幾何の手法を極めて非自明な設定のもとにapplyすることによって示されるが,それは代数幾何学に新しい研究方法をもたらすであろうと思われる。
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