研究概要 |
25ビームマルチビーム受信観測システムの分光計として用いる自己相関型デジタル分光計は,昨年度1系統分を製作し試験及び性能評価を行い,初期に目的とした分光計としての性能(512MHz帯域および32MHz帯域、分光点数1024ch,高速スイッチング観測可能)を満たしていることを確認した。 今年度は,自己相関型デジタル分光計24台分を開発・製作する事で,25ビームマルチビーム受信観測システムを完成させることを目的とした。 1. まず,自己相関専用LSIをマザーボード上に実装し24台の分光計を製作した。各24台に対し既知の信号を入力することで,それぞれが単体として理論的に予測される結果を与えるかという点を検査し,問題なく動作していることを確認した。 2. 次に,25ビームマルチビーム受信観測システムおよび野辺山宇宙電波観測所45m電波望遠鏡観測システムに組み込み,観測の全体制御中で他の装置と連動して動作できるようにした。天体の信号を実際に受信することで,システム制御全体の動作をチェックし,分光計の各機能が有効的に動作していることを確認した。また,実際に得られたデータを音響光学型分光計で取得した同じ天体からの同じ信号と比較し,一致することを検証し,システムとして完成できたことを確認した。 3. 最後に,システム全体の能力を評価試験するため,豊富に観測データが存在し,それらと結果を比較することで容易にシステムのチェックが可能となるオリオン巨大分子雲の試験観測を行った。総観測時間がたった25時間の短い時間にも関わらず,10'x45'という広大な範囲を20″グリッド、rms 70mKで観測出来ることを示せた。これは従来の観測システムでは250時間もかかる観測に相当するもので,期待されるパフォーマンスを実際に検証できた。 これらの点に関しては,日本天文学会春季年会にて公表予定である。
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