本年度はすばる望遠鏡試験観測装置としての二波長同時カメラ用のデータ取得システムの製作がほぼ完了したので、すばる望遠鏡用の中間赤外線観測装置のために開発されたSi:Asアレイ検出器の評価試験の第一段階を実行した結果、我々が入手済みのSi:Asアレイ検出器の試験素子の性能が予想したいたよりも優秀であり、そのまま天文観測に使用できる確率が高いという予備的な結果を実験室レベルで得ることが出来た。天文学用に開発されたこのアレイ検出器の稼働させたのは、我が国では始めてであり、国際的にも、カリフォルニア大学のグループのみが成功している。一方、この試験の結果、アレイ検出器の最適動作温度がアレイ製作会社の設計温度:絶対温度10Kよりも更に低温の、約6Kが中間赤外線の天文観測には適していることが判明し、上記、二波長同時カメラの冷凍機を、現存するこの種の冷凍機では最も強力な国産製の冷凍機に変更することが必要となり、それを天文観測用に適した使用条件でファブリペロ-光学系と結合する方法を開発して、新しい最適設計を終了した。現在、この設計に基づいて、カメラ光学・機械系の製作を継続中である。画像データ処理に関しては、我々の開発・試験・実証したユニークな二波長シフトアド法のすばる望遠鏡計算機システムに適合したアルゴリズムの作成作業が進み、計算機システム・グループと具体的な製作設計の検討を開始した。また、平成10年度、後半に予定されるすばる望遠鏡を用いての試験観測の開始に備えて中間赤外線波長での検出限界の試験に適した天体源のリストをヒッパルコス衛星のカタログを用いて用意し、約100個の天体源の第一リストを製作した。
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