研究概要 |
1997年7月にBESS測定器を用いた気球観測実験を行った。残留大気が5-7g/cm2の高度での観測後,測定器は無事回収された。飛行中の測定器の運転は順調で実データ収集時間17時間余り(1995年の約2倍)の宇宙線データを取得することができた。 今年度のフライトでは,新規に屈折率1.03のエアルジェル・チェレンコフカウンタを搭載し,飛行時間測定器の時間分解能を約80psecに向上させたため,反陽子同定可能なエネルギー領域を拡大することができた。またデータ収集システムの処理速度の向上により不感時間が減少し,実質的データ収集時間が増大した。データは現在解析中である。予備解析によれば,今年度の改良の結果,1995年のフライトに比べて数倍の反陽子が検出されており,エネルギースペクトラムの精度を圧倒的に向上できると期待される。 来年度の観測に向けた測定器の改良も行った。エアロジェル・チェレンコフカウンタについては屈折率を1.03から1.02に変更して,より高いエネルギー領域での反陽子識別を可能とする。飛行時間測定器については,再度ビームテストを行い,性能がやや劣化したカウンタの交換を行った。また,電荷の大きな原子核に対するデータ収集効率をあげるため,トリガー回路を変更して優先的に大電荷粒子をトリガーできるようにした。 新しい環境モニターシステムのプロトタイプが完成した。これにより、従来64点に制限されていたモニター点数を大幅に増加させることが可能になった。新システムを地上での宇宙線データ収集試験に試用してその性能確認を行い,1999年の観測で試用すべく準備を進めた。
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