研究概要 |
昨年度に引き続き,宇宙線反陽子のエネルギースペクトルを測定した。BESS測定器を用いて残留大気5g/cm2の高度約37kmで17時間の気球観測を行い,宇宙線データを取得した。観測後,測定器は無事回収された。今年度の観測では,新規に屈折率1.02のエアロジェル・チェレンコフカウンタを搭載し,反陽子同定可能なエネルギー領域を更に拡大することができた。またデータ収集システムの処理速度の向上により不感時間が減少し,実質的データ収集時間が増大した。データは現在解析中である。予備解析によれば,今年度の改良の結果,1997年のフライト同様に400例程度の反陽子が検出されており,エネルギースペクトラムの精度を圧倒的に向上できると期待される。 また一次宇宙線のエネルギースペクトルを測定した。最近大気ニュートリノ異常からニュートリノ振動が示唆されているが,大気ニュートリノフラックスを精度良く求めるためには,陽子/ヘリウムのスペクトルを決走する必要がある。 1995年観測データの解析が完了し,反陽子のフラックスに関する論文をまとめた。低エネルギー領域では2次起源反陽子のモデルと必ずしも良く一致していない。1次起源反陽子が存在する可能性も否定できず,今後更にデータを収集する必要がある。 新しい環境モニターシステムを製作した。これにより,従来64点に制限されていたモニター点数を大幅に増加させること,またGPS等のデジタル出力のモニターも組み込むことが可能になった。新システムをBESS測定器に組み込み,その性能確認を行い,1999年の観測で使用すべく準備を進めた。
|