研究概要 |
2000年度は太陽磁場の反転期に当たり,宇宙線の太陽モジュレーションの様相が大きく変化すると期待されている。太陽活動は急激に極大期へと向かっており,宇宙線のエネルギースペクトルは低エネルギー領域で大きく変化する。太陽モジュレーションの電荷依存性(正負電荷の差異)は太陽系内の宇宙線伝播機構を探る有効な手段であり,BESS実験による陽子・反陽子スペクトルが研究の基礎データとなる。 本年度は昨年に引き続き,超伝導ソレノイド,飛跡検出器,飛行時間検出器,エアロジェルチェレンコフ検出器,シャワーカウンタ(立体角の〜20%)を搭載したBESS測定器を大型気球で高度35km以上へ打ち上げ,約30時間の観測を行った。また上昇中の宇宙線データの収集も行った。 データは解析中であるが,太陽活動の影響はトリガー頻度に顕著に現れており,昨年と比較して陽子フラックスが大きく減少していることは確実である。反陽子については昨年同様数百例の観測が期待される。 昨年までに収集したデータ解析を進め,反陽子スペクトルの年次変化(1995〜1998年),一次宇宙線(陽子・ヘリウム)スペクトルの精密測定,反ヘリウムフラックスの上限値の更新,乗鞍山頂での陽子・反陽子のエネルギースペクトル測定,低エネルギー陽子スペクトルの精密化,気球高度でのミューオンフラックスの測定等の研究を行った。
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