研究概要 |
1) ポジトロニウム生成システム:我々が都立大学に構築した偏極陽電子ビーム生成装置TOPPSの改良により、ビーム広がりを3mmで、毎秒3万個の陽電子を生成することができた。チョッパー・バンチンチャーにより、2nsのビームパルス化に成功した。また、レーザーとの衝突を効率よく実現するために、電場ポテンシャルにより陽電子を取り込み、磁場によって陽電子運動量ベクトルを回転させ縦成分を横成分に変換する、という新しい陽電子蓄積の方法を開発した。現在、1μsの蓄積時間で、10nsのパルスを生成し、蓄積効率は12倍であるが、磁場の改良により効率の向上を図っている。熱脱離による超低速陽電子生成の飛行時間測定装置を製作し、基礎実験を行い性能を評価した。 2) レーザーシステム:ポジトロニウムのレーザー励起のためのCr:LiSAFレーザーを導入し、整備・調整を行った。これは、ポジトロニウムの寿命142ns以上の長パルス幅200ns、IS→2S励起波長243nm,ドップラー広がりをカバーする発信線幅140pm、繰り返し25Hzという特殊な仕様のレーザーである。パルスエネルギー、スペクトル測定により、目標の性能を確認した。レーザー光をポジトロニウム発生部まで輸送するために、紫外線に対して輸送効率の高い光ファーバーの導入を図り、基礎的測定を進めた。ワァイバーの利用により、衝突点でのレーザーのジッターを抑制することができた。 3) ポジトロニウムの1S→2S、レーザー励起についてのモンテカルロシミュレーションを開発し、励起機構、閉じ込め機構の理論的研究を進めた。
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