研究概要 |
1)装置の作製 表面・界面の磁気構造をX線回折法で調べるための超高真空槽を作製した。この真空槽には精密回転軸を有し試料の冷却と加熱ができるマニピュレーター、蒸着用の2本の高温クヌーセンセル、試料評価用の高速電子線回折装置と速電子線回折-オージェ分光装置が備わっている。また作製された試料を低温にして、大気中でX線回折強度を測る必要もあるので、磁場印加用磁石を持つ6Kまで冷却可能なクライオスタットも作製した。 2)試料蒸着用の金属基板結晶の評価 多くの興味ある表面・界面の磁気構造は、金属結晶の基板上に異種の金属原子を蒸着することによって作られる。そこで基板として代表的なNi、Au及びCuの結晶の完全性を回折強度曲線法とトポグラフィー法で評価した。その結果、これらの結晶は焼鈍を加えれば基板として使用に耐えうることがわかった。 3)Si/Fe/Si(111)試料の作製と放射光による測定 7×7構造が出ている清浄Si(111)表面にFeを2,3原子層蒸着してから加熱処理によってFeの2×2構造を作って、さらにSiのキャップ層を100Å蒸着した試料を作製した。この試料を高エネルギー加速器研究機構の放射光施設(PF)で構造評価をした。用いた手法は、反射率測定法、吸収端異常測定法、X線定在波法の三種である。これらの測定の結果Fe原子が理想的な超薄膜としてSi面上に成長していることがわかった。またFe原子とSi原子の位置関係を求めるためのデータ解析を行っている。 4)理論的側面の整備 単原子層からのX線散乱振幅の絶対値を求める計算方法を確立し、これが磁気散乱にも適用可能であることを示した。またX線回折強度分布の解析から、モデルに依存しないで電子スピン密度分布や軌道角運動量の密度分布を直接的に求められる方法も開発した。 以上の結果をもとに研究課題「基板結晶上の磁性薄膜結晶のの構造と磁性に関する研究」がPFで採択されたので、今後さらに本研究を進展させる予定である。
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