研究概要 |
今年度は磁場中X線構造解析装置のうち磁場に関する部分を実験条件にあわせて組立て,試験を行った.装置は極低温,強磁場中でX線測定を行うという意欲的なものなので,様々な実験上の問題点が明らかとなってきた.これらを解決しつつ,磁場のない状態での準備測定を行った.今年度は,関連分野でもっとも重要な国際会議(ICSM98)がフランスで開催され,分担者である大嶋,野上が参加し,関連した研究発表を行った.このひとつは磁場誘起スピン密度波相をもつ準一次元有機伝導体 (DMET-TSeF)_2AuCl_2での強磁場ホール効果の測定を行った結果をまとめたもである.(DMET-TSeF)_2AuCl_2系では,FISDWは磁場中で,低い電場領域でも運動していると考えるべきであるというのが我々の得た結果であり,TMTSF系のFISDWの電場効果に密接に関連したものであるが,両者の違いを際だたせる結果である. 双方のFISDW状態をX線測定するべきであるという,新たな課題が明らかになった. また,この国際会議ではDCNQI系,TTM-TTP系など,研究対象であるTMTSF系に密接に関連した一次元物質の低温構造解析の結果の報告を行った.とくにこれらの系で,低温でのCDW状態を明らかにし,金属絶縁体転移との関連を明らかにした点で重要な結果である.これらの結果は,1999年に論文誌Synthetic Metalsに掲載予定である.またこの国際学会では我々が課題としている,CDWとSDWの共存問題に対する新たな理論的取り扱いが発表され,有意義な会議であった.
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