研究分担者 |
長瀬 敏郎 東北大学, 総合学術博物館, 助教授 (10237521)
加藤 尚之 工業技術院, 地質調査所, 研究員
大谷 栄治 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (60136306)
齊藤 文良 東北大学, 素材工学研究所, 教授 (10007198)
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研究概要 |
821794 野島断層から採取した断層岩を解析した結果,地震性摩擦すべりの物理過程に関して以下のことが解った. (1) 地震性摩擦すべりは,thermal pressurization→ガウジのfluidizatin→ガウジの熔融という異なった物理過程が相次いで立ち上がる過程である.Thermal pressurizationは摩擦発熱→間隙流体の熱膨張→摩擦係数の低下という正のフィードバック機構である.ガウジのfluidizationは固体体積分率がある臨界値を越えた時点で開始し,摩擦係数を突然に著しく低下させ,slip pulseが実現する.Fluidizationにおいては固体粒子の衝突発熱が支配的で,温度上昇とともにガウジが熔融する.熔融開始時点では摩擦係数が突然増加し,ラプチャーが停止することもあり得る.さらに熔融が進行すると,摩擦係数は減少する. (2) ガウジが熔融したことは,シュードタキライトがアモルファスであること(TEMによる観察)から支持される.未熔融固体粒子の鉱物種と組成から,1000℃以上になったと判断できる.ガウジのfluidizationしたことは,後に述べる「破片対の発見確率による判定法」から保障される.Fluidizationの開始条件と粉流体の物性に関しては,粉体物理学における実験と理論が役に立つ.高速のすべりであったことは,熔融層(シュードタキライト)中に著しい乱流構造が見られることから分かる.すべり過程でFluidizeしたガウジと熔融層が共存したことは,両者が入り乱れて乱流構造を作っていること,および熔融体の滴がガウジの中に飛び散っていることから分かる. (3) 野島断層の断層岩は,深度3km程度に相当する温度約120℃で形成された過去の断層岩である.このことは,基質のかなりの部分に,ガラスから変質した0.1μm程度の葉片状スメクタイト微粒子とわずかな球顆状の緑泥石が生じていることから推定できる. (4) 他5つの断層から採取した断層岩を含め,ガウジの粒径は全てべき分布に従う.ガウジのfluidizationの判定基準としては,粉砕粒子の片割れを発見できる確率が大変有効である.これは活断層が地震性かクリープ性か評価に使える画期的な成果である. (5) 破砕帯の内部構造に対応した元素分布が認められる.ガウジ,野島断層のようなシュードタキライトと粉体岩の互層,マイロナイト帯を問わず,断層粘土帯,シュードタキライト層,ウルトラマイロナイトのような変形が著しく集中した細粒部にFe.Mn.Ti,Siが濃集し.Na,Caが少ない.
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