研究概要 |
開発した超高真空極低温原子間力顕微鏡および既存の実験装置を駆使して,アモルファス氷微粒子の生成・変成と彗星の起源・進化について以下の研究を遂行した. 1)アモルファス氷薄膜に,暗黒星雲と同じ条件(フラックス)の紫外線を照射して,水素分子の生成される反応を定量的に解析した.さらに、反応断面積を測定し,反応機構を決定した. 2)不純物を含むアモルファス氷の物性測定(熱伝導率および示差熱分析)を行った.熱伝導率は欠陥を含まないアモルファス氷より,2-3桁小さな値となった.示差熱分析の結果,不純物を含まないアモルファス氷では結晶化は発熱反応であるのに対して,不純物を含むアモルファス氷では吸熱反応となった.これはアモルファス氷の欠陥に含まれていた不純分子が,アモルファス氷の結晶化に際して蒸発し,蒸発熱を奪うためである. 3)今回新たに研究を行ったアモルファス氷への紫外線照射による水素分子の生成反応や熱物性の測定の結果はアモルファス氷の欠陥構造(ミクロ〜マクロ)によっている事が明らかになった. 4)以上の結果をもとに,彗星核の熱史を計算し,不純物を含むアモルファス氷(実際の彗星に近い)では,これまで考えられていたような暴走的な結晶化は起こり得ないことが明らかになった.
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