研究概要 |
宇宙存在度として宇宙に最も多量にある元素は水素である.近年、水などの大気海洋や地球表層部分を構成しているこれらの揮発性の物質が、海溝における海洋プレートのマントルへの沈み込みにともなって、地球内部に運ばれてゆくことが明らかになっている。本年度においては、マントル遷移層に存在する重要な含水鉱物であるスーパーハイドラスB相とEGG相の安定性を明らかにした。そして、下部マントルへの水の輸送様式に関する実験を行った。今回の実験の結果、スーパーハイドラスB相は約30GPa、1000℃の条件で、含水G相とマグネシオブスタイトに分解することが明らかになった。また、アルミナを含有するEgg相は下部マントル最上部に相当する23GPa、1000℃において、δ-AlOOH相とステイショバイトに分解することが明らかになった。δ ALOOH相は20GPaを超える高圧条件で安定であり、この相は様々な比率でSiとMg固溶し,Si、Mg、Alが酸素の八面体配位を取り,陵または角を共有する八面体の酸素に水素イオンが結び付いている特徴的な構造を持っている.δ AlOOH相はアルミナやシリカに富んだプレートの上部の物質中に見い出される可能性がある.その構造はSiO2の高圧多形であるスチショバイトおよびCaCl2型構造相と酷似している.このようなδ相AlOOHとCaCl2型SiO2の構造の類似性から,下部マントル条件でスラブの上部の物質中に存在が期待されているスチショバイトとこれが歪んだCaCl2構造がSi^<4+>=Al^<3+>+H^+の置換によって,重要な水の貯蔵物質になる可能性も明らかになった.
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