研究概要 |
この研究ではマントル遷移層と下部マントルにおける鉱物の相転移と元素分配を明らかにした。この研究は(1)含水鉱物の安定性、(2)融解現象とマグマの物性、(3)相転移カイネテイクス、(4)初期地球と核形成過程の研究に分けられる。(1)含水鉱物の安定性の研究では、プレートの温度圧力条件で安定な水を含む鉱物を探索し、とくに、下部マントルに安定に存在する含水G相をはじめて合成し、この結晶構造を解明した。また、下部マントルに沈み込むスラブの堆積物層や玄武岩層に存在する新たな含水相δ-AlOOHを発見し、その結晶構造を解明した。その構造はSiO2の高圧多形であるスチショバイトおよびCaCl2型構造相と酷似している.このようなδ相AlOOHとCaCl2型SiO2の構造の類似性から,下部マントル条件でスラブの上部の物質中に存在が期待されているスチショバイトとこれが歪んだCaCl2構造がSi^<4+>=Al^<3+>+H^+の置換によって,重要な水の貯蔵物質になる可能性もある。(2)融解現象とマグマ物性の研究については、ダイヤモンドの浮沈法で玄武岩などの密度を測定した。また、玄武岩マグマの粘性係数の測定に着手し、ダイヤモンドをマーカーにした落球法や、白金球のX線その場観察による方法を開発し、約6GPaまでの測定に成功した。(3)相転移カイネテイクスの研究では、α-β相転移速度に対する水の影響がを明らかにし、水が相転移速度を格段にはやめることを明らかにした。また、Mg2SiO4のγ相の分解のカイネテイクスを実験的に明らかにし、相転移の初期に準安定にMgO+ステイショバイトやMgO+イルメナイトの共存が出現することをはじめて明らかにした。(4)に関しては、下部マントル鉱物と金属鉄の元素分配と濡れ(界面円エネルギー)の測定を行い、下部マントルでの金属と鉱物の平衡、金属鉄の分離メカニズムについて検討した。
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