研究概要 |
ハワイ天皇海山列は地球上で最大のホットスポットの過去7000万年におよぶ活動史を記録している。ホットスポットは地球深部由来のマントル上昇流(マントルプルーム)の地表へのあらわれであり、ホットスポット火山活動を詳細に検討することにより、マントルプルームの温度や地球深部を構成する物質の化学組成に関する情報が得られる。これらの情報は地球全体のダイナミクスを解明する上でとくに重要な鍵を握っていると考えられている。マントルプルームのダイナミクスを解明するために、高橋ら東工大グループは1996年よりオアフ島コーラウ火山の陸上部分について系統的な試料採取と岩石学・地球化学的研究を進めてきた。これまでに約250個の陸上岩石を記載化学分析した。我々はコーラウ火山の初生マグマがSiO2=53%、MgO=7%の化学組成を持つシリカに富むソレイアイト玄武岩(または玄武岩質安山岩)であると結論した。 求められたコーラウ火山の初生マグマ化学組成は、我々が既に明らかにした米国コロンビア-リバー洪水玄武岩の初生マグマ化学組成と驚くべき一致を示している。我々はコロンビアリバー洪水玄武岩については、従来から考えられてきた高温のカンラン岩の部分融解による成因ではなく、プルームに巻き込まれて上昇した、エクロジャイト(地球深部に沈み込んだかっての海洋地殻)が深さ約60kmで選択的に融解して生じたと結論した(Takahashi,.Nakajima,Wright,1998)。もしハワイコーラウ火山の初生マグマもカンラン岩の部分融解ではなく、プルームに巻き込まれて上昇した海洋地殻成分の選択的融解で生じたとする我々の解釈(中嶋・高橋、本学会)が正しいならば、ハワイプルームの温度は従来の推定値(アセノスフィアより約300℃高温;Watson&McKenzie,1990)と比べてはるかに低温になる。従来のモデルよりプルームの温度がはるかに低い場合、どのような条件で重いエクロジャイト質の海洋地殻成分がプルームに取り込まれるのかが問題となる。プルームの発生機構を理解するために我々はマントル深部でのカンラン岩、エクロジャイトの相平衡関係や密度差の温度依存性を詳しく検討中である。
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