研究概要 |
本研究の目的は、炭素質隕石のコンドルールリムなどの始原的隕石の微細な組織と隕石稀ガス(特にNeやXe)の始原的成分の分布の間の関係を調べ、初期太陽系での物質形成の条件や形成過程を明らかにすることである。この研究で分析する試料の質量は数μg程度であり、発生するXe量は5x10^<-14>cm^3(1x10^6原子)以下である。このような極微量ガスの分析には、質量分析計のバックグラウンドを極限まで減らし、同時に分析計の感度を極限まで高めることが要求される。 購入した稀ガス質量分析計の感度は、1x10^<-13>cm^3Ar/V(Axial collector),1x10^<-12>cm^3Ar/V(Daly collector,V_<Multi>=900V,R=10^8Ω)が得られた。イオンポンプで排気した状態で真空度は1x10^<-7>Paである。この状態での分析計のバックグラウンドは、H_2,H_2O,N_2,CO,CO_2が主体で、Ar分析比分析の妨害となるH^<35>Clイオンによる^<36>Arへの寄与は1x10^<-13>cm^3以下である。 新しい分析計の立ち上げと平行して、衝突による衝撃によって炭素質隕石にトラップされている稀ガスの散逸を調べるための衝撃実験(30-70GPa)を行い、70GPaでPhase Qにトラップされている稀ガスの75%のがロスすること、しかしHL-diamondはショックで稀ガスをロスしないことなどを明らかにした。隕石を超高真空中でクラッシュしてガスを抽出分析する新しいテクニックを開発し、これを用いてEnstatite chondritesやPrimitive achondrite中の稀ガスを分析し、E-chondritesにトラップされているXeから、太陽型の同位体組成をもつXeを分離することに成功した。これはE-chondritesの成因を考察するうえで重要な制約となる条件である。この外に、火星起源隕石の稀ガス同位体宇宙化学的及び鉱物学的研究を行った。
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