研究概要 |
極く微量の希ガスを試料(隕石など)から抽出するためのタンタル炉を含む超高真空仕様の希ガス抽出・精製・導入系を作成し、昨年度に購入した希ガス質量分析計に接続整備した。同時に希ガス同位体定量分析のための標準ガス系(標準ガス溜とガスピペット)を作成してガス精製系に接続した。標準ガスとして、一定圧力・温度の乾燥空気を一定体積量り取って使用し、ヘリウム同位体比の較正には^3Heと^4Heの混合ガスを用いた。分析系の希ガス感度・同位体比測定でのMass Discrimination・バックグラウンド、特に"Hot Blank"とそれらの経時変化を調べた。感度およびMass Discriminationは途中に停電をはさんで、大きな変化がなく安定に推移している。系全体のHot Blank(at 1800C)は、^4He=166,^<20>Ne=4.80(^<20>Ne/^<22>Ne=8),^<36>Ar=41(^<40>Ar/^<36>Ar=290),^<84>Kr=1.89,^<132>Xe=0.184(in 10^<-12> cm^3STP)と通常の測定には充分低いが、サブミリグラムの隈石や宇宙塵試料からの極微量の希ガスを精度よく測定するためには、Ar,Kr,XeのHot Blankを更に1桁下げる必要がある。 Bruderheim(L6)隕石標準試料の我々の結果は、世界の希ガス研究室のデーターと良く一致し、標準ガスの定量に誤差がないことが分かった。ドームふじ基地で採取した宇宙塵を含む試料のHeとNeの同位体比は^3He/^4He=0.000260、^<20>Ne/^<22>Me=11.76で、solar flare He,Neの同位体比と一致した。宇宙塵の降下率と^4Heと^<20>Neの濃度の測定値から、この宇宙塵は地球に落下するまでに約2万年間太陽風の照射を受けたと考えられる。高島のカンラン石のHe同位体比を測定し、文献値と一致する値を得た。
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