研究概要 |
1.構造制御されたシクロポリシランを新規に設計・合成し、それらの分子構造と機能についての知見を得るために、本年度は、ラダーポリシランやかご状ポリシランのビルディングブロックとして、ジエチルアミノ基で置換されたシクロテトラシランを合成した。R(Et_2N)_2SiCl_2 (R=Thex) の脱塩素縮合反応では、4種のジアステレオマ-が生成するが、各異性体を分離してその構造を定めた。なお、これらのアミノ置換体は、容易にクロロおよびブロモ置換誘導体に変換できることが分かった。 2.カルコゲン原子や酸素原子の位置選択的挿入による新規環状式分子の創製するために以下の知見を得た。テキシル基 (1,1,2-トリメチルプロピル基) をアルキル置換基として利用し、ケイ素とイオウとセレンおよびゲルマニウムとイオウとセレンの組み合わせによるダブルデッカー型化合物(ケイ素およびゲルマセスキカルコゲニド)を得た。これらの新規かご状分子は、テキシル基の大きな立体保護を受け安定であり加水分解されない。また、これらは紫外光領域に強い吸収を示し、しかも構成原子が高周期になるにつれて、その吸収極大は長波長側へ移動することがわかった。さらに、ダブルデッカー型構造からアダマンタン型構造への熱異性化が生起することも見出された。 3.ラダーポリシランの酸化で位置選択的に酸素を導入できることが分かった。すなわち、シクロ[2.2.0]ヘキサシランのm-クロロ過安息香酸(MCPBA)による酸化では、条件を選ぶと側結合のみに酸素が挿入した二酸化物が生成する。同様に、三環系(anti体)、四環系(anti,anti体)および五環系(anti,anti,anti体)ラダーポリシランにおいても、それぞれ側結合に酸素が三個、四個および五個挿入した酸化物 anti-O_3、また、anti,anti-O_4、anti,anti,anti-O_5が主生成物として得られた。これらの酸化物は紫外領域に強い吸収を示す。例えば、anti-O_3とanti,anti,anti-O_5はそれぞれ275nm(ε3070)と297nm(ε51900)に最長波長吸収極大を示す。 4.シクロポリシランの他に、平面構造を有する分枝ポリシランを創製した。
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