研究概要 |
本研究は生体機能を有する金属錯体の設計・合成,さらにそれらを医薬への応用を含めた創造的で知的機能を持った活性金属錯体化合物として開発することを目的に行われている.研究テーマは以下の4点に分けられる. 1)SOD活性化合物の開発とその医薬への応用 2)生理活性種である一酸化窒素の生体作用機序の解析 3)光線力学療法としての新規なポルフィリン化合物の開発 4)生理活性金属イオンである亜鉛イオンの生体内における動的挙動解析 本年度のそれぞれの研究成果は以下の通りである. 1)SOD活性を有する新規金属錯体を合成し,構造活性相関を検討した.また酸素に安定な立体構造の設計合成も行った.その結果活性発現に必要な構造的要因が明らかになった.更に大腸菌を用いた細胞レベルでの活性も検討し,生体に対して高活性を有する錯体の合成に成功した. 2)我々のグループが開発してきたチオレートを第5配位子として有するP450型のポリフィリン錯体(SR錯体)はグアニレートサイクラーゼ,一酸化窒素合成酵素の機能解析の観点から注目されている.本年度はSR錯体-NOコンプレックスの物性についてラマンスペクトル等を用いてその物性を検討した. 3)光線力学療法の反応活性種は一重項酸素である.このテーマにおける最大の成果はこの一重項酸素を特異的に捉える検出法を開発したことである.本方法は光線力学療法だけにとどまらず,汎用性のある方法であるといえる. 4)亜鉛イオンに関しては亜鉛フィンガーやアポトーシスなどでその生理的挙動が注目されているが,本年度はこの亜鉛イオンを生細胞中でバイオイメージングとして捉える新規蛍光プローブ剤の合成を行った.このプローブ剤の有用性について現在鋭意検討を重ねている.
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