研究分担者 |
近藤 哲生 京都大学, 大学院・理学研究所, 助手 (20283583)
大塚 晃弘 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (90233171)
阪 敏朗 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (10025372)
矢持 秀起 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (20182660)
|
研究概要 |
ここでは本研究の目的の一つ、より高い超伝導臨界温度Tcを持つ新しい分子性超伝導体の創製を記す。数10種の有機ドナーを用いてC_<60>錯体作成を試み、OMTTF,HMTTeF,TSeC_1-TTF、EDT-TTF,EOET-TTF,BEDO-TTF、TDAPとの錯体結晶を得た。C_<60>分子のアクセプター性が弱いため、これらの錯体の基底状態は中性で絶縁体である。OMTTF錯体〔OMTTF・C_<60>・ベンゼン〕は、ドナー分子と結晶溶媒であるベンゼンの作る層と、C_<60>分子の2次元層が交互に積層した層状構造をなす。EOET-TTF錯体〔EOET-TTF・C_<60>・ベンゼン〕はより1次元的なC_<60>分子の配列を示す。他の錯体については格子定数を決定し、構造解析中である。別グループにより構造解析された中性錯体(ドナー:BED T-TTF,DBTTF,フェロセン、ヒドロキシン)を含め、真空下穏やかな条件(70°C以下で)でK,Rbをドープし、SQUIDにより超伝導を確認した。結果は以下の3つに分類できる。(1)この条件でC_<60>粉末にRbをドープしたところ、非常に微弱な超伝導シグナルが観測された(53日間で超伝導体積分率0.3% Tc=27K)。体積分率を3%にするには約10年以上の期間を要する、つまり実質的なド-ピングは起こらない。このような年単位のド-ピング期間を要する錯体として、TDAP錯体〔TDAP・C_<60>・ベンゼン〕がある。(2)HMTTeF,BEDT-TTF,EOET-TTF,ヒドロキノンの錯体は20〜50日間のド-ピングで、超伝導シグナルはいっさい観測されなかった。(3)OMTTF,DBTTF,フェロセン錯体では1日後に超伝導シグナルが現れ、時間とともに体積分率が増加し、一定のTcを示す。各々の超伝導体積分率、期間、TcはRbドープにおいて、OMTTF錯体(10%,19日,26K)、DBTTF錯体(〔DBTTF・C_<60>・ベンゼン〕:4.4%,100日,22K)、フェロセン錯体(〔(フェロセン)_2C_<60>〕:3%、34日,23K)である。ラマン散乱によるC_<60>のC=C Agモードの測定では、ドープ前の錯体、Rbドープ後、Kドープ後で1467,1453,1446cm^<-1>と異なる位置にピークが現れ、これらの錯体中でのC_<60>の価数が異なることを示す。
|