研究概要 |
κ'-(BEDT一TTF)_2Cu_2(CN)_3(Tc=3.5-5.2K)の超伝導性は、Mott絶縁体κ-(BEDT-TTF)_2Cu_2(CN)_3のCu^<+2>の一部をCu^<+2>に置換することにより発現されるとされていたが、それ以外に陰イオン層内における配位子置換が起因となりκ-型からκ'-型への超伝導体化が起きていることを、単結晶赤外・ラマン分光スペクトル測定により明らかにした。κ'-型錯体は、支持電解質としてCu[N(CN)_2]+KCN+18-crown-8 etherを用い電解法で作製する。作製した73バッチを、各バッチ(結晶集合体2〜5mg)についてSQUIDにて超伝導の確認をおこなった。そのうち、9バッチが超伝導転移を示し、そのTcが3.0Kから10.5Kにわたることを見いだした。これらのバッチの結晶は、Cu^<+2>のESRシグナルを示した。Cu^<+2>濃度とTcの相関をえるため、結晶個々のCu^<+2>濃度をESRで決定中である。また、単結晶反射スペクトル、赤外・ラマンスペクトル測定を行い、Mott絶縁体から超伝導体への転移機構を検討した。とくに、CN伸縮振動は、κ'-型錯体がCN基以外にN(CN)_2基をも含むことを示した。陰イオンN(CN)_2のサイズおよび形状は、ほぼCu(CN)_2に等しい。したがってこれらのことは、この錯体の陰イオン層が(Cu^<+1>)_<2-x-y>(Cu^<+2>)_x(CN)_<3-sy>[N(CN)_2]yと表記でき、Xとyを変えることにより、Tcを3Kから約11Kまで制御できることを示す。C_<60>と有機ドナーとの錯体では、EOET-TTF・C60・ベンゼンにおいて新しい晶形を見いだし、構造解析を行った。この錯体およびデカメチルフェロセンとの錯体でアルカリドープによる超伝導体化を実験中である。ペルシアノ陰イオンRO-TCA(R=Me,Et,Pr,Bu、TCA:テトラシアノアリル)とBEDT-TTF錯体において、Mott絶縁体であるα'-(BEDT-TTF)_2(MeO-TCA)(solvent)の結晶構造、伝導性、磁性を測定し、この錯体が室温放置または加熱により、低温まで金属であるβ″-(BEDT-TTF)_2(MeO-TCA)に転移することを見いだし、超伝導体化を検討中である。
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