研究分担者 |
大塚 晃弘 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (90233171)
阪 敏朗 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (10025372)
矢持 秀起 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (20182660)
近藤 哲生 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (20283583)
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研究概要 |
1)Mott絶縁体κ-(BEDT-TTF)_2Cu_2(CN)_3のCu_2(CN)_3陰イオン層は、無限ジグザグポリマーである(CN-Cu)_nをディスオーダーした(CN)^<-1>が連結する構造となっている。この(CN-Cu)_nの半分とディスオーダーした(CN)^<-1>すべてを[NC-N-CN]^<-1>で置換すると、T_c=11Kの常圧超伝導体κ-(BEDT-TTF)_2Cu(CN)[N(CN)_2]が得られる。本研究においては、部分置換を行うことによりTcが常圧で3Kから10.5Kに及ぶ多数の超伝導体を得た。また、[NC-N-CN]^<-1>の導入にともない、一部のCu^<+1>がCu^<+2>に置換される。従って、この系はκ-(ET)_2(Cu^<+1>)_<2-x-y>(Cu^<+2>)_x(CN)_<3-2y>[N(CN)_2]_yと表記でき、陰イオン[N(CN)_2]の含量は主にy=0.05、0.3〜0.4、0.8で、均一に陰イオン層に分布する。また、Cu^<+2>の含量は極めて小さい(x=0〜1 600ppM)。Y=0.3〜0.4のいくつかの単結晶のTcは,3.1,6.5,7.5,8.8,10.2Kと幅広く分布する。 2)この一連の錯体作成の際に、Tc=11Kを示すθ型(格子定数より判定)錯体を得た。Θ型で最初の10K級超伝導体である。結晶構造解析のため良質単結晶育成を行っている。 3)2〜3Kまで金属的なBEDT-TTF錯体を、有機陰イオン(テトラニトロビフェノレート、テトラシアノアリル誘導体)を用いて開発した。フレキシブルな分子構造を持つ陰イオンを用い、溶媒除去に伴うMott絶縁体-金属転移を見出した。遷移金属ジチオシュウ酸イオンを用いたBEDT-TTF錯体で、加圧下抵抗の急な減少(4.7kbar,7kのonset)を見出し、超伝導の確認を行っている。 4)BEDT-TTFとBEDO-TTFのハイブッリッドであるEOET分子を用い、バンド幅制御の観点から錯体作成を行った。BEDO-TTF錯体の特異的自己凝集能を利用し、透明な金属ポリカーボネート複合薄膜を開発した。 5)OMTTF・C_<60>・ベンゼン錯体へのRbドープによる超伝導は、ラマン測定より、C_<60>^<2->が関与していることがわかった。一方、Kドープによる超伝導はC_<60>^<3->が関与している。C_<60>よりも強いフラーレン(C_<60>Cl_6,C_<60>Br_x,x=6,8)を用い有機ドナーとの錯体形成を検討した。 6)他に、交互積層型超伝導体やD-π-A型超伝導体を開発する端緒として、初めての金属的な交互積層錯体(HMT TeF・Et_2TCNQ・THF_x)を発見し、一連のD^<+γ>-π-A^<-γ>化合物でのCT量(γ)を検討した。
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