分子性凝縮相における極端非平衡状態の生成とその物性の研究

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09304066
• 研究種目: 基盤研究(A)
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 松尾 隆祐 大阪大学, 大学院・理学研究科, 教授 (00028185)
• 研究分担者: 山室 脩 大阪大学, 大学院・理学研究科, 講師 (20200777) ; 稲葉 章 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (30135652)
• キーワード: 非晶質 / 非平衡状態 / ガラス転移 / 緩和 / 断熱型熱量計 / 低温熱容量 / 超急冷 / 熱測定実験装置

研究概要

物質の熱的性質の測定は多年にわたる研究の積み重ねによって進歩し、精度・確度ともに非常に高い域に達しているが、これまでの測定装置には大きい制約があった。それは非平衡状態にある物質を積極的に研究対象とすることができないことである。本研究では熱量計の外部で低温に凍結させた試料を迅速に熱量計内にセットすることができる装置を設計製作した。その原理は次の通りである。熱量計をクライオスタット本体とその中心に挿入する試料部分に分け、取り外し可能の構造とする。後者をその構造からセンタースティックと呼ぶ。センタースティックは試料容器を下端に取り付けた約1m長のステンレス鋼製の柱である。試料は室温において試料容器に入れた後、気密に封入する。その状態では安定平衡液体である。凍結試料を作るには、試料容器を液体窒素に浸す。そのとき冷却速度は毎分数百ケルビンに達する。急速冷却によって多くの液体は結晶化することなく凍結非晶質となる。もっと早い冷却を必要とする物質のガラス化(非晶質化)には、液体窒素で冷却した銅板上にその液体を滴下する方法をとる。この方法によると毎分数万ケルビンの冷却速度が得られる。こうして非晶化された試料を前もって冷却した試料容器に入れ、シールし、センタースティックに取りつける。この方法によって、熱平衡から極度に隔たった非晶質状態をつくことができた。この研究の最も重要な点は、こうして得られた非晶質の物性と熱平衡への緩和を従来の熱量計とまったく同じ精度・確度をもって測定できるようになったことである。

研究成果

• [文献書誌] I.Tsukushi,O.Yamamuro: "Construction of a Top-Loading Adiabatic Calorimeter and Enthalpy Relaxation of Glassy(1,3-Propanediol)0.5(1,2-Propanediamine)0.5." Rev.Sci.Instrum.,69,179-184. (1998)
• [文献書誌] O.Yamamuro,I.Tsukushi,: "Calorimetric Study of Glassy and Liquid Toluene and Ethylbenzene:Thermodynamic Approach to Spatial Heterogeneity in Glass-Forming Molecular" J.Phys.Chem.,102,1605-1609. (1998)
• [文献書誌] S.Takahara,O.Yamamuro,: "Development of an Adiabatic Calorimeter for Simultaneous Measurement of Enthalpy and Volume under High Pressure." Rev.Sci.Instrum.,69,185-192. (1998)
• [文献書誌] O.Yamamuro,T.Ohta: "Dielectric and Calorimetric Studies on Dynamical Properties of Halomethane Crystals." J.Kor.Phys.Soc.,32,S397-S399. (1998)
• [文献書誌] M.Ishikawa,O.Yamamuro: "Calorimetric Study on Glass Transition of Plastically Crystalline Cyano adamantane." J.Kor.Phys.Soc.,32,S842-S844. (1998)
• [文献書誌] H.Obara,O.Yamamuro: "Thermal and Dielectric Studies of Potassium Phosphate Glass." J.Kor.Phys.Soc.,32,S821-S823. (1998)