研究概要 |
1.塩化リチウム、塩化ベリリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウムの水溶液の水溶液を急冷することにより、非晶質固体(ガラス状態)をつくり、低温熱容量、中性子非弾性散乱、および中性子回折の実験を行った.また水を低温壁に蒸着することにより非晶質氷を生成しこの中性子非弾性散乱強度を測定した.水溶液系のすべてについて、10-15ケルビンの温度において非晶質は結晶化させたものより3-5倍の熱容量をもつことがわかった.また、中性子散乱では4-5meVに過剰の散乱強度が現れた.水溶液系ガラスではボゾンピークが存在しないとされてきたが、熱および中性子散乱の結果はともにその存在を明確に示した.また蒸着非晶質氷の中性子散乱からも、2-5meVの領域にに結晶状態に比べて大きい過剰のの状態密度を見出した.さらに水分子の回転振動にあたる領域(40-70meV)には結晶氷より低くいエネルギーにシフトした散乱強度を得た.また試料のアニーリングによってこれらは高いエネルギーにシフトし、結晶のスペクトルに近づくことが明らかとなった.今後これらの結果をソフトホテンシャルモデルと比較する. 2.ガラス状態にあるメタ燐酸アルカリ塩の熱容量を極低温から測定し、また同じ試料を熱処理によって結晶化させたものの熱容量を測定した.10-40Kにおいて、Na,K,Rb,Csすべてのメタ燐酸塩非晶質が結晶化試料に比較して最大約3倍の熱容量をもつことを見出し、その解析によって、低エネルギー励起に関係する状態密度を得た.以上の結果は非晶質の動的性質に関する最も確実な定量的解析である.
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